2013年8月17日土曜日

IT業界に対する誤解が意外とあることとそれに対する所感

今回はRaspberry Piから離れて業界ネタ

就職してから早4か月強、新人基礎研修(ITの基礎だったりマナーとかビジネス文書とかの社会人のイロハとか)と技術研修、製品研修を一通り終えてもうすぐOJTの勝又です。

まあ筆者はタイトル通りIT業界でまだ見習いといえどいちSEとして働いてますが以外と大学の同期や後輩らでIT以外の人からはIT業界に対する誤解や勘違いが非常に多いと感じるところ。
そこで実際に業界の中の人(まだ新卒入りたてだけど)が実際どうなのかをコンセツゴテーネーに説明しましょう。

実際に大学の同期(IT以外)や後輩から寄せられた質問形式での説明です

1.「ITのエンジニアってパソコン相手の仕事だからコミュニケーション能力とか必要ないよね?」(男性/20代/金融)


結構これはIT以外の人から言われるがこれはウソ。かくいう筆者も当初はそのように考えてた時期もあったが就活だったりOB訪問だったり同じく業界人である親父の話や入社後に上司や先輩社員の話を聞いてそれは違うということを知った。
システム開発や構築においては上流工程(要件分析やクライアントの業務分析)と下流工程(実際にプログラム書いたりテストやったりの開発とその後の運用)に分かれますが上流工程(とくにNTTデータのような大手SIerやベンダー)ほど開発よりも顧客との泥臭い交渉やチームのマネジメントや情報共有(これは開発もですが)など必然的にメインとなりエンジニアというよりも営業に近くなります。従ってエンジニアにはコミュニケーションが不要と言うのは嘘。

ちなみに以下のいずれかに一つ以上当てはまる人は上流工程SEに向かない人と言われてます。
(念のため当てはまるからSE適性がないというわけではない)
①人間嫌いな人
②1日中パソコンだけ相手にしていたい人
③一度受けたストレスや屈辱は相手に直接返さないと気が済まない人
④急な予定変更に対応できない人

もし心当たりがあれば早急に習慣や行動などを日常で地道に改善することを推奨します

2.「IT業界ってブラックばっかりなんでしょ?仕事がどの業界よりもハードって聞いたけど…」(女性/20代/インフラ)


これも嘘、といえばまた嘘になるが、あえて言うなら半分は本当、半分は嘘、といった感じか。
まあ何を以てブラックとするかですが大抵の場合は単に激務なだけだったり給料が他に比べて多少安い(会社にもよりけりですが極端に安いのならそれはそれでブラックである)とかですがね。

恐らくITがブラックと言われるのは業界の構造によるものだったりもします。

最近になって少しずつ変わってきてもいますが以前まで「ITゼネコン」という言葉に表されるように一番上に大手のベンダーやSIerがデンと座りそこから下へ下へと行くにつれて子会社・孫会社や下請けと続くピラミッド構造。上層部は案件・要件とプロジェクトの管理だけをやって開発を下請けに丸投げするというもの。これで実は結構中抜きが行われているのも事実。(つまりどういうことかといえば客が元受ベンダー・SIerに1億円で発注→元請が一次請けに5000万円で発注→一次請けが二次請けに2000万円→二次請けが三次請けに1000万円→三次請けがさらにその下請けに500万円…な具合)

上の立場の会社は下請けに丸投げをしそして丸投げされた側は一気にそのしわ寄せを受けるしさらに中抜きでカネのロスも大きい。

あと労働環境の観点でもブラックかどうかの差も大きいです。
メーカー系・ユーザー系大手のSIerやその系列においては多くの場合研修制度も整い待遇や福利厚生も充実していたりコンプライアンスが厳格な分サービス残業もないところが多いです。(筆者の会社においても残業も勤怠にキッチリ記録され深夜残業や休日出勤においては事前に勤怠システムで申請し上司の許可がないとできない、残業と言っても現在ではグループ全体でも経営層のトップダウンにより残業の削減や有給取得の推進など労働環境も大幅に改善されている)、ただ中小をはじめとするソフトウェアハウスではデスマーチやサービス残業の常態化や低賃金などブラックな環境が多いのもまた事実です。(ただスキルを磨けば転職などで抜け出せますがヤバいと思ったら自分でスキルを磨いて脱出の用意を)

3.「情報処理とかの資格試験の話を聞くけど資格がないとダメなの?」(男性/20代/学生)


情報処理関連では必ず耳にするのが基本情報や応用情報といった「情報処理技術者試験」、他にもMicrosoftやOracleなどのベンダー製品技術者資格などいろいろですがないと仕事ができないというわけではない。
基本的に資格は「独占資格」(医者、弁護士、会計士など該当資格がなければ業務に従事できないもの)、「認定資格」(英検、漢検、簿記などある特定の分野における知識や能力を証明するもの)に分けられ情報処理技術者試験などは後者に当てはまる。
最も資格がないとできないならば最初から「文理不問」とか「未経験者歓迎」な求人は最初からあるわけがないですが。
最も大抵の会社は入社後に資格取らせたり受験料を会社が負担してくれたりさらには資格取得報奨金というボーナスも付いたりとか転職の際に業務と関連付けてアピールしたりと美味しいことだらけなので取って損はない、ていうか取らなければ損。
資格の詳細についての説明はここでは割愛するけど覚えていたら多分別記事で書く。

4.「就活の時にITの会社でインターンをやってた時があってその時にユーザー系とか独立系とか聞いたけど違いや意味がいまいち分からないけどあれは何?」(男性/20代/公務員)


メーカー系、ユーザー系、独立系、これはこの業界だとよく聞くけど基本知識として押さえておくこと。

①メーカー系…電機メーカーのグループ企業、日立とかNECとか富士通とかの子会社。賃金体系やキャリアパスなども親会社に準ずることが多い。(主な会社:ざっくばらんに言えば名前に「日立」や「NEC」が付いているとこ)

②ユーザー系…ユーザー企業(銀行、商社、電機以外のメーカー、インフラなど)の情報システム部門が分離してできた会社、ユーザー企業である親会社の情報システムの構築や保守といったグループ向け中心のとこもあればグループ以外の企業との取引を積極的に行う会社も多い。(主な会社: 伊藤忠テクノソリューションズ、野村総研、住商情報システム(※)など)

③独立系…上記以外の企業、大手から中小と千差万別、ベンダーやメーカーの制約を受けない、特定のある分野に特化した製品や技術を持つなどの特徴のある企業もあるけど収益基盤や売り上げなど企業間の格差も大きい。特に中小に至っては大手の下請け開発が中心といったことも少なくない。(主な会社: TIS、大塚商会、CSK(※)など)

5.「ITのエンジニアって文系でもなれるの?」(女性/20代/通信キャリア)


勿論なれます、事実筆者が文系卒SEなので。でなけりゃ筆者も就職してませんしそもそも未経験者歓迎とか文理不問なんて求人も(ry
文系理系云々というよりは地頭のよさや切れ(もっともこれはその人の生まれつきのものなのでどうしようとも言えないのですが)、物を論理的に考えることができるのか、あとはコンピュータやテクノロジーに興味・関心を持ち続けることができかつ常にそれを学び続ける意欲があるのか、がこの業界で働くための適性といえます。(もっとも論理的に考える力や前提知識等の観点では理系、特に数学・機械・電気・電子・情報系などがアドバンテージがありますが)
事実文系の同期でも在学時から統計処理やデータ処理やWebアプリや趣味でバリバリコードを書いている人もいればソーシャルゲームのコンテストで最優秀賞に入賞する人もいるので人それぞれです。私の職場でも文系卒の方も多くいます。
ただIT業界に関心を持つためやその際のヒントになる本については後々紹介します。

結構ITというとまだまだ業界一般でも他と比べて歴史が浅いことや常に新しい技術が出て変化が激しいこと、まだまだ一般に広く認知されてないこともあって先入観や誤解も多く技術者に対する勘違いや誤解も多いものですがその技術者に対する誤解が取り払われ尊敬される仕事になることを願うばかりです。


※…住商情報システムとCSKは2011年10月1日に合併しSCSKとなり現在に至る

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